若さと美しさの象徴である黒髪の、対極にあるもの
古来より、日本人にとって黒髪とは、「若さ」と「美しさ」の象徴でした。古人が書き遺した、黒髪の美しさを讃えた俳句や短歌を目にした経験のある人も、多いのではないでしょうか。「黒髪」を愛する文化ゆえに、黒髪に対するこだわりが強く、古代より白髪隠しのための白髪染めは広く行われていたようです。こうした白髪染めは、美の追求のみが理由だったわけではありません。その証拠に、心身を戦いに投じていた戦国武将も白髪染めを行っていました。強さを求める戦国武将が白髪染めを行う目的は、美しさではなく「若さ」。「敵に老いた姿を見せたくない」という想いから、白髪を黒く染めていたようです。それだけ、白髪は「老い」の象徴だったというわけです。この頃に利用されていた白髪染めは、現在のような化学成分の入ったものではなく、自然由来の天然染料が使われていたようです。戦国の時代には墨を、明治時代の半ば頃からは、タンニンと鉄を配合した染料が愛用されていたのだとか。現在の主流である酸化染料は、19世紀のヨーロッパで誕生し、日本に入ってきたのは明治の終わりごろだと言われています。以来、白髪染めは何度も改良され、現在のような「美しく・短時間で」染まる白髪染めに成長し、手軽かつリーズナブルに手に入るようになりました。こうした白髪染めの改良や成長は、ひとえに人々の「白髪を隠したい」という想いによるものです。その想いの根底には、黒髪は美しく若く見える、白髪は年老いて見える、という観念が横たわっているのだという事実は否めません。では白髪の発生は、「老い」だけが原因なのでしょうか?それはある部分においては正しく、ある部分においては間違っています。髪に色をつける色素細胞の寿命による白髪発生は、確かに年齢的な老いが原因ですが、喫煙や睡眠不足などの生活習慣の悪化による白髪発生は、悪しき生活習慣によって身体の器官がサビつき、色素細胞が打撃を受けて正常に稼働しなくなった結果によるものなので、一概に「老いが原因だ」とは言い切れません。「若さ」を求めて白髪を隠すならば、まずは生活習慣の見直しから始めてみてはいかがでしょうか。